Before Cyberspace Falls Down...

"Atoms for peace and atoms for war are Siamese twins” Hannes Alfven

小川晃通 『アカマイ―知られざるインターネットの巨人』

akadns.netという名前はよくお目に掛かるが、その中身について一切知らなかったので手にとった。書名こそアカマイであるが、中身はアカマイの仕組みにとどまらず、寡占化がすすむインターネットの有り様を描いている。 セキュリティに関して言えば確かにオリジンサーバの保護としてアカマイは有効だと思う一方で、万が一アカマイの配信ネットワークが侵入された場合、トラフィックの30%を改ざんされてしまうという新たなインターネットの急所が生まれていると感じた。

本書の大変わかりやすい解説を読んだ上で疑問も幾つか残った。まず最終的に一つのデータベースにアクセスするようなWebアプリケーションなど動的なページにアカマイはどう対応しているのかという点。次にアクセスログなどは配信サーバにしか残らないのではないかという点。最後に本書にかかれるようにアカマイがDNSキャッシュサーバのIPアドレスから一番近い配信サーバを選ぶのだとすれば、GoogleDNS(8.8.8.8)などを使っている場合どうなるのかという点である。 アカマイはもっと他の情報も集めているのではないだろうか。

面白かった点メモ

AS同士の接続は金(経費負担)と力(トラフィック量および持っている経路情報)によってきまる。

トランジット

トランジットを提供する: 大きな組織が小さな組織からお金をもらってパケットを運んであげる トランジットを購入する: 小さな組織がお金を出して大きな組織にパケットをインターネットから運んできてもらう

トランジットはパケット転送について支払いが発生するが、それ以外に2つの組織を結ぶ物理的な回線費用は通常小さな組織が負担する。

ビアリング(ピア)

AS間でトラフィックを交換しあう。トランジットの場合と違うのは多くの場合無償であること。全ての経路情報を交換するのではなく自ネットワークの経路のみを交換すること。したがって成立するのは同規模の組織の間であること。

自AS内にアカマイの配信サーバがあれば、上位ISPへの支払いがへるというのがISPにとってのAkamaiサーバ設置のメリット。

ティアワンとハイパージャイアン

ティアワンISPはインターネットを支配していると考えられがちだが、設備投資等で経営は必ずしも楽でない。近年ではハイパージャイアントとよばれるトラフィック転送量ランキング上位組織の発言力が増している。(例:アカマイ、コムキャスト、グーグル、フェイスブック、ライムネットワークスなど)

インターネットに接続していても全てのASの経路情報を持っていないことは、珍しくない。

 アカマイのポジション

アカマイは強くて弱い存在。対ISPではアカマイサーバを置くことでISPのコスト削減ができるため、強い。対コンテンツ事業者では、他のCDNへの乗り換えなどを考えるとあくまで選択肢の一つ。