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"Atoms for peace and atoms for war are Siamese twins” Hannes Alfven

警察(いわゆる)ノンキャリアの出世について

また自分の研究には全く関係ないけど、面白い論文みつけた。

小林良樹「道府県警察の最高幹部のリーダーシップ形成~総務部長の昇進パターンの理論的分析~」

本稿で、筆者は慣例上ノンキャリの最高ポストとされている道府県警察本部の総務部長についた人物の経歴を分析している。結果そこに①警察署長経験②警察本部総務・警務部経験の長さ③警務課長・首席監察官・各課筆頭課長の経験の有無という共通点を見出した。

そして警察という特殊な組織に限らない一般論として、リーダーへと成長するためには「一皮むける経験を通して」経験から学習する能力が大切であるとする。 一皮むける経験の具体例としては3つのパターンがあげられている。

  • 横方向の視野を広げる: 他部署・他分野への異動、他組織出向、海外赴任
  • 縦横に視野を広げる: 組織改革や組織の大きな戦略策定など組織全体を俯瞰する業務
  • リーダーとして胆力をつける: 子会社・支店などの最高幹部として組織を引っ張る業務

筆者は、上記のパターンが警察にもあてはまるということを、道府県警察の最高幹部の経歴が示しているとする。

たしかに警察署長は一国一城の主でそのポストが成長させそうである。しかし警察関係者でない私には首席監察官という業務が上のどれにあてはまるのかピンとこなかった。その点について筆者の解説はこうだ

監察官は主に部内の不祥事案の処理などを担当するポストである。かかる業務は組織の危機管理的な業務でも有り、一つでも対応を誤ると組織に対するダメージが非常に高い繊細な業務でもある。したがって、当該ポストの勤務経験は、(中略)やはり「従来の自分の経験を超える判断を責任をもって行うことを求められる経験」、すなわち「胆力」を鍛える経験となる場合が少なく無いと考えられる。

筆者の調査によると34%がこの首席監察官の経験を経て総務部長となっているという。営利企業で監査室長やお客様相談センター長がその後に重要ポストにつくという例はあまり聞かないように思う。 首席監察官という聞きなれないポストの重要性、ひいては警察組織における不祥事対応の重要さが本論で最も印象的だった。

本論は見方によっては(道府県)警察組織は、「もとより正しい資質をそなえた立派な人物を首席監察官に据え、組織全体の綱紀を正すことを怠たらない素晴らしい組織」とも言えるし、「不祥事をうまく処理して組織をまもった人物が出世する内向き組織」とも言えるなと思った。

自衛隊の警務隊のトップも同様に重要なポストであるか?興味がわいてきた。

外務省の出世レースに関する論文 - Before Cyberspace Falls Down...