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"Atoms for peace and atoms for war are Siamese twins” Hannes Alfven

戦国大名の「外交」 by 丸島 和洋

戦国大名の「外交」 by 丸島 和洋

戦国大名の「外交」 (講談社選書メチエ)

戦国大名の「外交」 (講談社選書メチエ)

歴史好きの母のすすめで購入して、正月の息抜きに読む。(息抜きと表現するのは、私は戦国武将の歴史についてはまったくの門外漢であるからである。本書が容易い本ということでは無い。)

筆者はまず戦国時代の大名は「国家」であったとする。大名に戦国法の制定権があり、彼らは自領を「御国」「国家」と表現し、そしてポルトガル人宣教師たちは諸大名が王であるとして本国に報告をしている。

そして大名、すなわち当時の国家間での外交の一部を、古文書を読みやすい現代文に書き下すという手法も用いて、華麗に再現してみせた。

当時の取次はつまり現代の外交官であり、起請文は条約文であり、書札礼は外交(儀典)プロトコルであり、手筋はチャネルである。現代の外交と本質的な違いはない。

一方で当時の外交官(取次)は、現代の職業外交官と違う点もある。和平交渉の相手方から知行地を与えられたり、独断でうごいたりする。また電話もメールもない時代であり、甲斐と今川ですら数日のタイムラグが発生する。

当時の外交の手順の中でも、第三者に書簡をよまれないよう暗号が用いられていたと想像するが、その点については本書では触れられていないのが個人的に残念であった。

本書がよかったのは、筆者があとがきに吐露するように、細分化し矮小化していく個別の戦国大名研究へのアンチテーゼとして外交という視点から複数の大名を横断して分析を行ったところ、そして「専制的で」武力による領土拡大しか頭にないというイメージの強い戦国大名像を打ち破る爽快感を感じられるところである。

おもしろかった。